『わが心の歌舞伎座』DVDレビュー：劇場に刻まれた記憶と感動

長年親しまれてきた歌舞伎座の建て替えに伴うさよなら公演。その舞台裏を記録したドキュメンタリーDVD『わが心の歌舞伎座』は、単なる記録映像ではなく、歌舞伎役者や関係者の想いが詰まった作品です。劇場への愛惜、伝統を守り続ける覚悟、そして未来への希望。それらが映像を通して伝わってきます。

歌舞伎座の歴史とさよなら公演

歌舞伎座は、日本の伝統芸能である歌舞伎の殿堂として、長きにわたり多くの人々に愛されてきました。しかし、老朽化のため建て替えられることになり、2010年4月から2013年2月まで、さよなら公演が行われました。このDVDは、その貴重な期間を記録したものです。

このDVDの見どころは、何と言っても普段見ることのできない舞台裏の映像です。役者たちの稽古風景、舞台装置の準備、そして公演を終えた後の安堵の表情など、舞台を作り上げる人々の熱意が伝わってきます。

特に印象的だったのは、ベテラン役者たちが歌舞伎座への想いを語る場面です。彼らの言葉には、劇場への深い愛情と、伝統芸能を守り続けることへの決意が込められています。また、若手役者たちが、伝統を受け継ぎながらも新しい歌舞伎を創造しようとする姿も描かれており、歌舞伎の未来を感じさせてくれます。

歌舞伎のドキュメンタリーは他にもありますが、この作品の魅力は、さよなら公演という特別な時期に焦点を当てている点です。他の作品では見られない、劇場全体が惜別ムードに包まれている様子や、関係者たちの特別な想いが伝わってきます。

例えば、NHKの「日本の芸能」といった番組でも歌舞伎は取り上げられますが、特定の演目や役者にフォーカスすることが多く、歌舞伎座全体を捉えたドキュメンタリーは少ないです。

私も歌舞伎ファンの一人として、さよなら公演には何度か足を運びました。このDVDを観て、当時の感動が鮮やかに蘇ってきました。特に、千穐楽のカーテンコールの映像は、涙なしには見られませんでした。劇場全体が一体となって、歌舞伎座に感謝と別れを告げる様子は、まさに圧巻でした。

DVDを観終わった後、改めて歌舞伎座の歴史と伝統の重みを感じました。そして、新しい歌舞伎座が、これからも多くの人々に愛される劇場となることを願っています。

『わが心の歌舞伎座』は、歌舞伎ファンはもちろん、日本の伝統芸能に興味がある全ての人におすすめできる作品です。さよなら公演の感動を追体験し、歌舞伎座の歴史と伝統に触れることができるでしょう。ぜひ、この機会にご覧ください。

劇場に刻まれた記憶と感動を、ぜひご自宅で。